香水を25年ぶりに変える|はじまりは「香水物語」
二十歳を過ぎたころから25年間、同じ香水を使ってきた。いつだってどんなときだってその香りと一緒だった。
なくなれば買い足し、海外へ行けば、DFSでストックを買った。結婚後は、いつしか夫の出張土産の定番となっていた。
「自分のお気に入りの香り」をひとつ見つけたいと思ったのは、高校生の時に読んだ森瑤子の本「香水物語」がきっかけだった。もう手放した本だから、今読んだらどう思うかはわからない。でも当時の私にはかなり響いた。早く香水の似合う大人になりたいと思ったものだった。
本の貸し借りをしていた仲の良い同級生、イダちゃんが香水物語を読んだ後、「これに出てくる香水、ほとんど家にあると思う。持ってくるよ。」と言う。聞けば、海外出張の多いパパがミニチュアコフレをよく買ってくるのだと。
プアゾン、オーソバージュ、レールデュタン、ナルシスノアール、イヴォアール、ジェム…。
放課後の教室で香水物語の目次を見ながら、イダちゃんと一緒に香水をひとつひとつくんくん。
「イメージ通りだ」とか、「ちょっと甘いよね」とか、「これが好き」「あれが好き」なんて言いながら、はじめての香りと美しいデザインのボトルにどきどきした。
イダちゃんは神戸の大学に進学して、トレゾァを愛用してた。学生時代もちょくちょく会っていたから、今もトレゾァの香りがするとイダちゃんを思い出す。
イダちゃん今どうしているだろう。
25年使い続けたシャネル N°5 オードゥ パルファム。同じ香りを使い続けるからにはつけすぎは避けたく、いつだって膝の裏にひとふき。子供が生まれてからは軽めのオードゥ トワレットに。
25年の間に何の香水を使っているのか尋ねられたのは数えるほどで、毎回「(自分がN°5に抱いていた)イメージとは違うね。」と言われた。
シュッとスプレーしたトップノートの華やかな香りも、ラストノートのほんのりパウダリーな香りも、どの瞬間も心地よく大好きな香り。
先日、香水のストックが切れた。これまでなら迷わず同じものを買いに行くところだが、今回は変えたくなった。
「香水を変える 心理」で検索すると
オンナが香水を変えるのは、
引用:Y STYLE
恋をしたとき
大好きな彼と別れたとき
自分に変化を求めているとき
恋もしていない、大好きな彼と別れてもいない。
自分に変化を求めている、これ一択。
そうか変わりたいのか、このあいだ誕生日だったしなと少し納得してみる。
さまざまな香水の中から気になるもの、実際に試して決めたのが、AesopのTacit。爽やかな柑橘系&ウッディが広がる凛としたユニセックスな、これまでとは全く趣向が異なる香り。
私はどんなふうに変わりたいんだろう?またこれも25年間使うのか?
…すると70歳を超えるじゃないかと驚いてしまう。
気軽に使って、気軽に変えられるのが香水のいいところ。
気分一新、しばらくTacitを楽しんでみよう。